はじめてのお留守番
雨が降っていた平日の夜の出来事です。
その前の週末に借りたビデオが返却日になっていたので
ムスメに「ビデオを返しに行くから一緒に行こう」と
誘ったところ、「何か新しいビデオを借りたい」と言います。
でも、平日は保育園から帰ったら、やれごはんだお風呂だ
歯磨きだとバタバタしてあっという間に寝る時間になってしまい
ビデオを観る時間なんかなくてもったいないので
「今度保育園がお休みのときに借りようね」と言いました。
ところが、「嫌だ、どーしてもきょう借りたい」とムスメが言い張るので
「それじゃあ、あなたは行かなくていい。ママひとりで行ってくるから
待ってなさい」と言ったところ、「嫌だ、一緒に行く」と言うかと思いきや
「わかった。お留守番してる」と言うではありませんか。
(夫はまだ仕事から帰っていませんでした。)
まだベビシッターさんに預けていた頃のことですが
別れ際に泣かれるのがつらくて、いけないことだとは思いつつ
ムスメに気がつかれないように、そーっと家を出ていたことが
何度もあって、ムスメはその後遺症で「ママが私を置いて
どっかに行っちゃう」という恐怖心がとても強いのです。
(いま思うと、保育園になかなか慣れなかったのもその影響だと思います)
小さい頃、寝ている隙にマンションの下まで新聞を取りにいって
戻ってきたら、ドアに張り付くようにして泣いていた姿が忘れられず
3歳半近くなるいまも、新聞を取りに行く時間以上、ムスメを
ひとりにしたことはありませんでした。
でも、意地になっているとはいえ、本人が「大丈夫だもん。
お人形しゃんと待ってられるもん」と言っているわけだし、
ビデオ屋は行って帰って10分の距離なので、
いい機会かもしれないと思い、「人が来てもドアを開けちゃ駄目よ」
「電話も出ちゃ駄目よ」「ベランダに出ても駄目よ」と何度も言い聞かせ
ディズニーの歌のビデオをセットしました。
さすがにムスメは不安になったらしく、「これが終わるまでに
帰ってくる?」と聞いてきました。
「これが終わるまでには絶対帰ってくるから」と約束して
それでもやっぱり心配で「大丈夫?ほんとに大丈夫?」と聞くのですが
「大丈夫」と言うので、意を決して行くことにしました。
「それじゃあ行ってくるね」「行ってらっしゃい」・・・・
玄関のドアを閉めたとたん泣き出すかも、と耳を澄ませたけど
その気配なし。エレベーターを待ってる間も、心配で
何度もドアまで駆け戻って耳を澄ませては「大丈夫。まだ泣いてない」
マンションを出たところでも耳を澄ませ、上の階から泣き声が聞こえて
こないのを確認してから、さあ走った走った。
妊婦なのも構わず、信号も無視して。
このとき心配だったのは、もう泣くことではなく、不安のあまり私を探そうと
ベランダによじのぼって落ちてしまうこと。
この数分のうちにそんなことが起こってしまったら、たった数百円のビデオ代の
ために私は一生悔いを背負って生きることになるだろう。
いやいや、不安を感じて、ベランダに出て、何か登るものを見つけて、よじ登る
までには必ず帰ってこれる、と何度も自分に言い聞かせました。
そして・・・
足元をびっしょり濡らしながらようやく玄関まで戻ってきて
そーっとドアを開けると、ソファにちょこんと座っておとなしく
ビデオを観ていたらしいムスメがゆっくりと振り向いて
「ママ・・・」と言ったとたん、「わあーん、ママ、ママ」と
泣き出しました。
やっぱりすごく不安だったんですね。
でもビデオを観たら、まだ予告の後の2曲めの途中で、時間的には
下に新聞を取りに行って、近所の奥さんとちょっとおしゃべりして帰ってきたのと
同じくらいしか経ってないことが判明。
それでも親子共々ドキドキ大冒険の数分間でした。
ムスメはこの体験が結構自信になったらしく、時々寝る前に思い出したように
「ひなちゃんひとりでお留守番できたんだよね」と言います。